今回は動態全般(血中薬物濃度)に関わる薬物動態パラメータになります。

C_max(最高血中濃度:Maximum Concentration)

定義: 投与後、血中濃度が最も高くなる時の濃度(mg/L, ng/mL など)。
・吸収の程度を反映し、薬の効果の強さを予測する指標。
・経静脈投与の場合は、投与終了直後の血中濃度となり、経口投与では吸収速度が最も高いタイミングでの血中濃度。
・有害事象(副作用)のリスクとも関連(C_maxが高すぎると副作用が増える可能性)。
・ピーク値とは異なる可能性があり、C_maxとピーク値は適切に使い分ける必要がある。

t_max(最高血中濃度到達時間:Time to Maximum Concentration)

定義: 投与後、血中濃度がC_maxに達するまでの時間(時間単位, h など)。
・吸収速度を反映し、吸収速度が大きいほど短くなる。
・静脈内投与であれば、投与終了直後のタイミングである。
・経口投与であれば、吸収にかかる時間を示す指標となる。
・製剤設計の評価(速放性 or 徐放性など)に役立つ。

AUC(血中濃度-時間曲線下面積:Area Under the Curb)

定義: 血中濃度(C)と時間(t)の関係を表す曲線の下の面積(mg・h/L など)。
・縦軸を血中濃度、横軸を時間として、血中濃度推移をグラフ化した際に、血中濃度に囲まれた面積。
・薬物の全身曝露量を示し、投与された薬がどれだけ体内に吸収されたかを評価する。
・吸収されて血中に入った薬物量に比例するため、治療効果や副作用を予測するうえでよく利用される。
・生物学的利用率(F値)の算出に利用される。

※1-コンパートメントモデルでは、AUC(mg・hr/L)=投与量(mg)÷クリアランス(mL/min or L/hr)で算出可能である。そのため、1日量とクリアランスが同じであれば、1回投与でも分割投与でもAUCは同一となる。

t_1/2(消失半減期:Eliminatation Half-life)

定義: 血中濃度が半分に減少するまでの時間(h)。
・薬物の排泄速度を示す指標。半減期が短いほど消失がはやい。
・半減期の4-5倍の時間が経過すれば定常状態に到達するため、投与間隔や蓄積性の判断に重要(t_1/2が長いと投与間隔が長くなる)。

※薬物の消失速度定数(k_el)とは反比例の関係がある(線形1-コンパートメントモデル)。
※吸収過程が存在する薬剤(経口投与など)の場合、吸収の過程が無視できるまで時間経過しないと、t_1/2の経過で血中濃度が半減するという定義は当てはまらない。
※その他、1-コンパートメントモデルに当てはまらない場合、線形性を示さない場合も定義が当てはまらないことがある。

一覧

パラメータ定義意義・特徴応用例
C_max最高血中濃度薬の効果の強さ、副作用リスク抗菌薬の効果(C_max/MIC)
T_maxCmax到達時間吸収速度の指標即効型 or 徐放性製剤の比較
AUC血中濃度-時間曲線下面積全身曝露量、生物学的利用率バイオアベイラビリティ評価
t_1/2消失半減期排泄速度、投与設計服薬回数の決定、腎・肝機能障害時の調整

演習

下記の血中濃度推移におけるC_max, T_max, t_1/2のおおよその値は?

参考:クラビット錠250mg/クラビット錠500mg/クラビット細粒10%, 添付文書 2023年3月改訂(第2版)




(解答)



参考資料
Amazon.co.jp: 薬局 2023年3月増刊号 特集 「薬語図鑑:基礎薬学用語を現場で使える知識に訳してみました」 [雑誌] : 医師・薬剤師 25名: 本

薬がみえる vol.4 第1版 | 医療情報科学研究所 |本 | 通販 | Amazon

投稿者 takapi

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